現場に口出しするな

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現代語訳

一体、司令官とは国家の補佐役である。補佐役が君主と親しいなら国は必ず強くなり、 補佐役と君主との間に溝があるなら国は必ず弱くなる。

だから、君主が軍事について心配しなければいけない点は三つある。

第一に、軍隊が進んではいけない局面をわきまえずに「進め」と命令したり、 軍隊が退いてはいけない局面をわきまえずに「退け」と命令すること、

こういうのは君主が軍隊の行動を縛り、足を引っ張っている例である。

第二に、軍隊の事情も知らずに現場の司令官と同じように軍隊の業務を行おうとすること。こんなことをすれば兵士たちは混乱する。

第三に、いざ戦いが始まってからどう動くか、その動き方も知らないのに現場の司令官と同じように命令すること。こんなことをすれば兵士たちは疑いを抱くようになる。

軍隊が混乱し疑いを抱いているなら、そこに付込んで外国の諸侯が攻めこんでくる。こういうことが、軍を乱し勝利を捨て去ることなのだ。

原文

夫將者國之輔也、輔周則國必強、輔隙則國必弱、故君之所以患於軍者三、不知軍之不可以進、而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退、是謂縻軍、不知三軍之事、而同三軍之政者、則軍士惑矣、不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝、

書き下し

夫れ將は國の輔(ほ)なり、輔周(しゅう)なれば則ち國必ず強く、輔隙あらば國則ち必ず弱る、故に君の軍に患う所以は三つあり、軍の進むべからざるを知らず、之に進めと謂い、軍の退くべからざるを知らず、之に退けと謂い、是を縻軍(びぐん)と謂う、三軍の事を知らずして、三軍の政を同じうすれば、則ち軍士惑う、三軍の權(けん)を知らずして、三軍の任を同じうすれば、則ち軍士疑う、三軍既に惑い且つ疑えば、則ち諸侯の難至る、是を軍を乱し勝を引くと謂う、

現代語訳・朗読:左大臣光永

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