参考文献

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『新釈漢文大系36 孫子 呉子』 天野鎮雄 明治書院

おそらく日本で一番信用できる『孫子』のテキスト。「わかりやすい…」「すぐわかる」の類でなく、一字一句正確に、厳密に『孫子』を学びたいなら、これを購入するのが一番。

『中国古典百言百話4 孫子』 村山孚 PHP

1ページごとに「孫子の言葉の抜粋(書き下し)」+「原文」+「解説」という構成。孫子の抜粋の仕方が見事。孫子はもともと短く簡潔だが、そこからさらに中心となるエッセンスだけを抽出している。これなら気に入った言葉があればすぐに覚えられ便利だ。メインとなる解説部分は、日常ネタが多いのでとても読みやすい。

戦史からの引用もあるが、あまり詳しくなりすぎずに、歴史に詳しくない読者への配慮を感じる。また著者自身の失敗談なども『孫子』にからめて時折語られ、親近感をおぼえる。個人的に、中学2年の時はじめて読んだ『孫子』の解説書なので、とても思い入れが深いです。あらためて読み直してみて、読みやすさに感動した。これから『孫子』を読む人は、この本をまず読むのがいいと思う。

『新訂 孫子』 金谷治訳注 岩波文庫

きわめて読みにくく不親切な本。読む人のことがまったく考えられていない。

致命的なのは、漢文と書き下し文が一対一に対応していない点。筆者の勝手な独自解釈で書き下し文を原文から修正してある。

たとえば、「四五者、不知一」の書き下しを「此の三者、一も知らざれば」と堂々と書いてある。そして注の部分に「「四五者」…恐らくは「此三者」の誤りであろう」と小さく書いてある。

「お前の独自解釈で書き下し文を変えるな!」と叫びたくなる。別の説があるのなら、いちおう原文と書き下しを一対一に対応させた上で注意書きの項に「※ただし~という説もある」と書くべき。まともな知能のある著者なら、そうする。

とにかく、原文と書き下し文が一対一に対応していないのが致命的にわかりづらく、ひどいの一言。作者は自分でこの本を読んだことがあるのだろうか?この本を読むと『孫子』についての理解がメチャクチャに破壊される。読むべきではない悪書の典型。

『ライバルに勝つ65の知略!目からウロコの孫子の兵法』 島崎晋 PHP

各章「孫子の言葉+意訳+読み下し+事例」で構成されている。章の終わりに挿入されるコラムと「古戦場を歩く」もとても読みやすく、ためになった。項目の選び方も秀逸。引用されている事例は三国志や項羽と劉邦、日本の戦国時代など馴染みのあるものばかりで、また文章にこまかな配慮が行き届いているので、とても読みやすい。

あらすじのような簡潔な説明にも関わらず絵が浮かぶ。戦況図も簡潔かつポイントをおさえており、わかりやすい。タイトルといい表紙といい、オッサンくさい堅い文章かと思ったが、ぜんぜんそうではなく、読みやすかった。「兵法」関係の知識は、あれこれ読むよりもこの一冊をとことん熟読したほうがいい。たいがいの知識は身につく。

『オール図解 30分でわかる 孫子の兵法』 杉之尾宣生監修 日本文芸社

主にビジネス・リーダーシップの観点から孫子を語っている。見開き1枚で1項目を解説し、右側が説明文。左側が図解と孫子本文の言葉をドーンと大きく出す構成で、とてもわかりやすい。反面、孫子の言葉を無理やりビジネスに結び付けすぎている短絡さも感じた。私は30分では読めなかった。

孫子経営塾
http://sun-tzu.jp/

『教養としての孫子の兵法』 高畠 穣 日本文芸社

孫子の兵法の各章を、事例を引いて論じる。各章、「孫子の言葉 + 事例」という構成。引用される事例がほとんど春秋戦国時代のものなので、春秋戦国時代にある程度くわしく無いと、読みづらい。まず名詞が「名前」なのか「地名」なのか、はたまた「役職名」なのか、とまどう。そういう基本的な気遣いが文章に感じられない。孫子の言葉と引用された事例が、どう考えても噛み合わない章がいくつかある。

『孫子 一日一言』 武岡淳彦 経営書院

365日、1日ひとつの話題を取り上げる形で『孫子』を語っていく。1日ぶんの文章が適度な長さで、読みやすい。たしかにこれを毎日読んでいくと、自然に『孫子』の教えが腹に入ると思う。作者の軍隊時代の経験を事例として語っているのが、読みごたえがあって素晴らしい。実体験ならではの迫力がある。

『MY 古典 孫子のことば』 今枝二郎 新文会

孫子の言葉を取り上げ、それを「受験勉強に活かす」「ビジネスに活かす」という切り口で語っている。しかし、どちらも短絡的で、強引にこじつけた感じがする。『孫子』本文の読み込みが浅いままに、無理やり現代の事例にあてはめた感じがする。一番の長所はイラストがかわいいこと。

『リーダーシップ 孫子』 武岡淳彦 集英社

リーダーシップの観点から孫子を論じている。事例は戦争の事例とならびビジネスの事例が多く語られている。『孫子 一日一言』よりも文章が間延びして読みにくい気がした。小見出しの文字が目立たないせいかダラダラ文章が続く感じで、疲れる。

現代語訳・朗読:左大臣光永

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