始めは処女の如く、後には脱兎の如し
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現代語訳
軍隊を動かす時は、十分に敵の意図を把握していることが大切である。敵の意図に沿って直進し、千里先で敵将を討ち取る。巧妙な戦い方とはこういうものだ。
いよいよ開戦となれば、敵国との関門を封鎖し、通行のための割符を折り捨て、使者の行き来ができなくする。
朝廷では全力を尽くして戦争に関する事を進める。敵が動揺していれば必ずそれにつけこんで攻め入り、まず敵が大切にしている所を密かに攻撃目標に定め、黙って敵の動きに従っているように見せて、ここぞという場面で一気に攻撃に転じる。
はじめは処女のようにしなやかに。そうして敵が門戸を開いたところで、後には駆け出す兎のように、鋭く攻撃する。こうすれば敵はとても防ぎきれるものではない。
原文
故爲兵之事、在於順詳敵之意、并敵一向、千里殺將、此謂巧能成事者也、是故政舉之日、夷關折符、無通其使、厲於廊廟之上、以誅其事、敵人開闔、必亟入之、先其所愛、微與之期、踐墨隨敵、以決戰事、是故始如處女、敵人開戸、後如脱兎、敵不及拒、
書き下し
故に兵を為すの事は、敵の意を順詳するに在り。
敵をあわせて一向し、千里にして将を殺す、此れを巧みに能く事を成すと謂う。
是の故に政の挙なわるるの日は、関を夷め符を折りて其の使を通ずること無く、廊廟の上に厲しくして以て其の事を誅む。
敵人開闔ーすれば必ず亟やかにこれに入り、其の愛する所を先きにして微かにこれと期し、践墨して敵に随い以て戦事を決す。
是の故に始めは処女の如くにして、敵人 戸を開き、後は脱兎の如くにして、敵 拒ぐに及ばず。
現代語訳・朗読:左大臣光永