司令官のあるべき姿

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現代語訳

司令官は、静かでつつしみ深く、公正でなければならない。兵士たちに戦略・戦術を知らせてはならない。戦略や戦術、また部隊配置や迂回経路に変更を加えた時も、兵士たちには知られないようにする。

いざ兵士たちを率いる時は、まるで高い場所に登らせてから梯子を取り去るようにする。敵国深く侵攻して、いざ決戦となると、今まで使っていた舟を焼き捨て、今まで使っていた釜を破る覚悟だから、羊の群れを後ろから追い立てるように兵士には勢いがある。

兵士たちは羊の群れのように追い立てられるのであり、進むべき方向をわきまえているわけではない。

兵士たちを集めて最も危険な場所に投入するのが、司令官の仕事だ。

地形的条件、押すか退くかという判断、人間心理については、よく考察すべきである。

原文

將軍之事、靜以幽、正以治、能愚士卒之耳目、使之無知、易其事、革其謀、使人無識、易其居、迂其途、使人不得慮、帥與之期、如登高而去其梯、帥與之深入諸侯之地、而發其機、焚舟破釜、若驅羣羊驅而往驅而來、莫知所之、聚三軍之衆、投之於險、此謂將軍之事也、九地之變、屈伸之利、人情之理、不可不察、

書き下し

将軍の事は、静かにして幽く、正しくして以て治まる。

能く士卒の耳目を愚にして、これをして知ること無からしむ。

其の事を易え、其の謀を革め、人をして識ること無からしむ。

其の居を易え其の途を迂にし、人をして慮ることを得ざらしむ。

帥いてこれと期すれば、高きに登りて其の梯を去るが如く、深く諸侯の地に入りて其の機を発すれば、舟を焚き釜を破りて、群羊を駆るが如し。

駆られて往き、駆られて来たるも、之く所を知る莫し。

三軍の衆を聚めてこれを険に投ずるは、此れ将軍の事なり。

九地の変、屈伸の利、人情の利は、察せざるべからざるなり。

現代語訳・朗読:左大臣光永

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