利するに非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず

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現代語訳

勝利から得られる利益を十分に刈り取ることもせず、いたずらに戦争を長引かせるのは、まずい。物資や人員の無駄遣いである。

聡明な君主はこれを知り、能力のある司令官はこれをわきまえ、利益がなければ動かず、得るものがなければ軍を動かさず、さしせまった危険がなければ戦わない。

君主が怒りに任せて軍隊を動かしてはならない。司令官は憤りに任せて戦いを挑んではならない。

怒りはじきおさまるし、憤りはすぐに止む。だが国が滅べば二度とは建て直せず、人が死ねば二度とは生き返らないのだ。

だから聡明な君主は軍事行動をつつしみ、能力ある司令官はこれを戒める。これが国と軍隊を安泰にする方法である。

原文

夫戰勝攻取、而不修其功者凶、命曰費留、故曰、明主慮之、良將修之、非利不動、非得不用、非危不戰、主不可以怒而興師、將不可以慍而致戰、合於利而動、不合於利而止、怒可以復喜、慍可以復悦、亡國不可以復存、死者不可以復生、故明君愼之、良將警之、此安國全軍之道也、

書き下し

夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり。命けて費留と曰う。

故に明君はこれを慮り、良将はこれを修め、利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。

主は怒りを以て師を興すからず。将は慍りを以て戦いを致すべからず。

利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。怒りは復た喜ぶべく、慍りは復た悦ぶべきも、亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず。

故に明主はこれを慎み、良将はこれを警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。

現代語訳・朗読:左大臣光永

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