正法と奇法

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現代語訳

およそ戦いというものは、正攻法ではじめ、型破りな奇法で最終的な勝利をおさめる。うまく奇法を繰り出せるものは、天と地のように極まり無く、黄河や長江の水のように尽きることが無い。

終わってはまた始まることは、太陽と月のようで、死んでまた生まれ変わるのは四季の移り変わりのようだ。音階は五種類に過ぎないが、その五音階の交じり合った変化は、とても聴き尽くせない。

色は五色に過ぎないが、その五色が交じり合って生じる変化は、とても見尽くせない。味も五種類だが、それが交じり合った変化は、とても味わいつくせない。

同じように戦闘の勢いというものも、正法と奇法の組み合わせに過ぎないのだが、その組み合わせによる変化はとても極めつくせない。

正法と奇法がぐるぐる回ってお互いに生じあうことは、まるで丸い輪に端が無いようなものだ。誰がこれを極められようか。

原文

凡戰者、以正合、以奇勝、故善出奇者、無窮如天地、不竭如江河、終而復始、日月是也、死而復生、四時是也、聲不過五、五聲之變、不可勝聽也、色不過五、五色之變、不可勝觀也、味不過五、五味之變、不可勝嘗也、戰勢、不過奇正、奇正之變、不可勝窮也、奇正相生、如循環之無端、孰能窮之、

書き下し

凡そ戰いは、正を以て合し、奇を以て勝つ、故に善く奇を出す者は、窮まり無きこと天地の如く、竭(つ)きざること江河の如し、終りて復び始まるは、日月(にちげつ)是なり、死して復び生まるるは、四時(しいじ)是なり、聲は五つに過ぎざれど、五聲の變(へん)は、勝(あ)げて聽くべからざるなり、色は五に過きざれど、五色の變(へん)は、勝げて觀るべからざるなりなり、味は五に過ぎざれど、五味の變は、勝げて嘗むべからざるなり、戰いの勢いは、奇正に過ぎざるも、奇正の變は、勝げて窮むべからざるなり、奇正相生じ、循環の端無きが如く、孰か能(よ)く之を窮めん、

現代語訳・朗読:左大臣光永

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