まず不敗の態勢を作り、次に敵の隙につけこむ

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現代語訳

昔の戦上手は、まず「攻撃されても絶対負けない」という状況を作って、それから敵が態勢を崩して「今攻撃すれば絶対勝てる」という状況になるのを待った。

「攻撃されても絶対負けない」状況を作るのは、こちら側の仕事だが、「今攻撃すれば絶対勝てる」という状況になるのは敵側の事情である。

だから、いかに戦上手であっても「絶対負けない」という状況を作ることはできても、「絶対勝てる」という状況を確実に作ることはできない。

だから言うのだ。「勝利は予測できても、確実ということはありえない」と。「絶対負けない」というのは守備に関することだ。一方「必ず勝てる」というのは攻撃に関することだ。

守備の態勢をとれば戦力に余裕ができ、攻撃の態勢をとれば戦力が不足する。守備のうまい者は大地の奥深く潜伏し、攻撃のうまい者は大空の上にはばたく。

だから味方を危険にさらさず、しかも完全な勝利をおさめることができたのである。

原文

孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵之可勝、故曰、勝可知、而不可爲、不可勝者、守也、可勝者、攻也、守則不足、攻則有餘、善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也、

書き下し

孫子曰く、昔の善く戰う者は、先ず勝つべからざるを為し、以て敵の勝つべきを待つ、勝つべからざるは己に在り、勝つべきは敵に在り、故に善く戰う者は、能く勝つべからざるを為すも、能く敵をして勝つべからしめず、故に曰く、勝は知るべく、爲すべからず、勝つべからずとは守りなり、勝つべしとは、攻むるなり、守れば則ち足らず、攻むれば則ち余りあり、善く守る者は、九地之下に蔵(かく)れ、善く攻むる者は、九天の上に動く、故に能く自ら保って勝ちを全うす、

現代語訳・朗読:左大臣光永

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